月草日記

探るな

分裂

 卒論(卒業制作:小説)が全然進まないので、AIに続きを書かせたら? とふと思い立ってしまった。正直、自分が書いている作品はテーマが複雑で取り上げるものもめちゃくちゃ(用地収容、全球凍結、ヤギ、遠近感と時間の関係など……)で大した期待はしていなかったが、AIの方も負けじとぶっ飛んだ設定になって面白かったので、このブログで共有しておこうと思う。

 どうせこれから大幅な加筆修正が加わる予定の初稿だし、いっしょ。

 

以下本文。

 

 コンテナを土地に繋ぎ留めるハブは住居管理棟で集合し、管理棟の二階から伸びる廊下で研究所の本館に接続する。もしも空から見下ろせば、本館が身体で、管理棟を付け根に、コンテナが鳥の羽根のように見える——ゆえカナリアと呼ぶ、といった話もあるらしい、とゴードンは得意げに語る。想像してみるが、とても鳥のようには見えない。
「それに従えば、今は換毛期ってわけだ。これから段々と暖かくなるから、極寒の環境目当てに来ていた研究者はこぞって退去し始める。一方でその時期になると引越し費用も安くなるから、新しく入居する人も増えるってわけだ」
 実際の換毛期とはちょっとズレているらしいけれどな。と付け加えて本館駐車場に車を停め、二人は車の外へと出た。ゴードンはコートの裏から手袋を取り出す。数秒もしない内に、守衛が二人を見るなり入館証の提示を求める。門の前で見せたことを伝えても取り合わず、手袋を取り外し、財布に入った入館証を再び提示する。「頑固なんだよな、いつも」とゴードンは愚痴をこぼす。本館の扉を開けて中に入れば暖房の熱気が顔に当たり、息苦しさを覚える。
「ここはいつだって暖房が効きすぎだよな。夏は寒すぎるくらいだし」
 エレベーターに乗り込むとレヴィは「何階に行けばいいんだ?」と訊ね、三階のボタンを押す。すこし遅れて若い研究生が、模造紙を腕いっぱいに抱えて、閉まりそうなドアに無理やり乗り込んできた。
 扉が開くと、若い研究生は二人が向かう方向とは逆の方向へと消えていった。廊下をしばらく歩いていると、壁が白から灰色へ、床材もリネンからマットに変わる。通路の左側に等間隔に扉が並んでいる。通路の突き当たりにも同じような構造が続いている。
「いつ来ても、本当に人がいるのかってくらい静かな場所だな」
「構造上、扉も壁も二重だからな。ウチのボロアパートとは大違いだ」
「そうか、俺はてっきり物静かな奴が多いんだと思っていたぜ。ほら、そこの部屋だ」
レヴィが立ち止まる。扉にはプレートが掛かっているものの、番号はない。それは他の部屋と同じだった。加えてネームプレートもなかった。これはズボラな人間の部屋の特徴だった。代わりに『研究中』と書かれたダクトテープが貼られている。
 外側の一つ目のドアを開け、コンテナにつけられた二つ目のドアをノックする。すぐに返事があった。レヴィが扉を開けると、奇妙な臭いが鼻をついた。部屋に人はいなかった。長い髭に、体にびっしりと詰まった白い巻毛、垂れた耳。横に伸びた瞳孔。人はいなかった——代わりにヤギがいた。狭い研究室を大きな網のゲージが占領している。
「なんだ、これ」「ここで生物を飼育するなんて、許されてんのか?」「俺だって知らねえよ、ジンブリットの奴、最近予算が多く割り振られるから、実験の規模やジャンルに見境がなくなって来てる」「なぁ、ゴードン、触っていいのかな?」「やめとけよ、噛みつかれるかもしれんぜ。口から覗いている歯を見てみろよ、馬鹿みたいにデケェ」
異様な光景に、二人も思わず面食らいながらも、研究生の端くれとして、ここでは滅多に見ることのできない動物に興味を覚えざるを得なかった。
「や、驚いた? レヴィスンは久しぶりだねぇ」
「久しぶり? ほんの数週間会ってないだけだろうに」
 生活スペースに続く奥の部屋から女が顔を出す。彼女はレヴィのことを決して愛称で呼ぶことはなかった。
「ジプリット、どうしたんだ。これ。これ……というかこのヤギだ。どうしてこんなところにいるんだ?」
「ちょっと、研究に必要でね」
研究に必要だったらなんだって支給されるのか? レヴィは困惑した。
ジプリットはゴードンやレヴィと歳が一つしか離れていないにも関わらず、ゴードンと同じ研究分野でリーダー職に就いている、出世頭だった。そのせいもあって、ゴードンよりずっと年上に見えた、少なくとも外見上は。

//こっからAIが9割書いている

「あ、レヴィスンは知らないかもしれないけど、ここの所長は私だから」
「……は?」
「知らなかったのかい?」
「いや、知ってる。でもなんでそんな偉いさんがわざわざこんなところにいるんだよ」
「私がここにいないと、君たちのような研究員はろくな研究ができないからだよ」
「おい、待てよ、冗談は止してくれ」
「私はいたって真面目だけど」
「じゃあお前は一体誰の下で働いているんだよ」
「もちろん、私の上司は所長である私」
「なんだよ、それ」
「ま、すべての人類がオールトAIに管理されている以上、そういうことになるわね」
「はぁ、まったく。相変わらず、よくわからない理屈ばっかり並べ立てやがって」
「君のほうこそ、いつまで経っても子供みたいな口調じゃないか。もう少し大人になったほうがいいと思うけれど」
「うるせえよ!」
「二人とも、もういいだろ。とりあえず中に入ろう」
ゴードンは二人の言い争いを止めに入る。
ジプリットの研究室には、様々な種類の動物の標本が展示されていた。レヴィとゴードンは物珍しげに眺めていたものの、特に関心を示すこともなく、ケージの中に閉じ込められたヤギを見ていた。
「このヤギは特別性でね。毎秒二つに分割し続ける。ほら見てな」
促されるまま観察をし続けると、ヤギは一匹の塊から二匹に分裂していた。
「このヤギはね、一日に六回交尾するんだ」
「ふぅん」
「ほら、もう一回」
今度は三匹のヤギに分裂した。
「そして二百二十日後、二千四十二匹になる」
「へぇ」
「さらに二万八千九十六回分割すれば……」
「ストップ! わかったよ。つまりこのヤギは、一日で二倍ずつ増えていくってことだろ?」
「そうだよ」
「すげえな、これ。どうやって増やしてるんだ?」
「このヤギの精子卵子は二つずつある。一方を雌に、もう一方を雄に与えることで、二匹が誕生する。雌から誕生した個体が二匹、雄から誕生した個体が二匹だから、合計すると六匹になる。それを毎日繰り返すわけさ」
 黒板に図式を書きながら、ジンブリットはそう説明した。そしてその黒板も、チョークも、ジンブリットも増殖していく——レヴィとゴードンは我が目を疑った。しかし、それは紛れもなく現実であり、彼らはジンブリットが一人増えたのを目の当たりにしていた。
「どうだい? すごいだろう?」
ジンブリットは得意気に胸を張った。
「ああ、確かにこれはスゲェ。でも、どうしてこんなに増えるんだ?」
「そこが難しいところでね。繁殖行動と分裂現象の間に因果関係があるかどうか調べているんだけど……今のところ、何もわかってないんだよね」
 彼女が指をパチンと鳴らすと、今度は世界が分裂を始める。レヴィとゴードンは言葉を失った。
「なぁ、ジンブリット」
「なんだい?」
「お前、本当に人間なのか? 本当は機械とかじゃないのか?」
「失礼だなぁ。正真正銘の生身だよ。ちゃんと脳味噌もあるし、心臓もそれぞれある。2セットね。ああいや、違うな。世界に私が二人居て、そんな世界が二つあるから4セットだ」「やめてくれ。気持ち悪いよ」
「じゃあ、レヴィスンはどう思う?」
「うーん……」
レヴィは頭を捻らせた。「ま、あれだ。俺たちの世界が実は全部偽物で、本当の世界はこのヤギみたいに増え続けているんじゃないかって思った」
「うん、面白い発想だと思うけど……ちょっと飛躍してないかなぁ。私としては、もう少し具体的な仮説を期待していたんだけど」
「例えば?」
「例えばこれはAIが作り出した仮想の夢で、私たちはその夢の中で生きているだけに過ぎないとか」
「おい、まさか、そんなこと本気で考えているのかよ」
「いや、ただの例え話だよ。でもまあ、そういう考え方もあるなと思ってさ」
ジンブリットは再び手を叩き、分裂する世界を止めた。

 

世界の分裂は免れたらしい。よかった〜〜

この世界もAIが作り出した仮想の夢で、私たちはその夢の中で生きているだけに過ぎない、そんな可能性を棄却することはかないませんでしたが

 

おわり

 

AIのべりすと/とりんさま7.3B V3

Bit192, Inc.